家には弥生専用の場所が作られ、そこには瑛介が贈ってくれた品々が並べられていた。その場所は、たくさんの物でいっぱいになった。今は、何も持たずに家を出ることにし、結婚指輪すら寝室に置いていった。かつて霧島家が破産したとき、彼女はほとんど手元にお金がなく、持ち物のほとんどを瑛介が用意してくれた。だから、出て行く以上、全てを置いていくべきだと思った。「そんなこと言わないでよ。どれも買うのにはお金がかかるんだから」由奈は残念そうに言った。それを聞いた弥生は、ふと気づいたように軽く笑い、「そう?それなら、もっと価値のあるものをいくつか持ってくれば良かったかも。あとでお金に換えられるかもしれないしね」由奈はその言葉にすぐに考えを改め、「まあ、やっぱりいいかもね。どうせ新しい生活を始めるんだから、古いものは捨てて正解だわ。だけど、冗談を言えるほど気持ちが落ち着いてるなんて、少し安心した」弥生は肩をすくめて、「新しい生活が始まるなら、笑わなきゃね」と応じた。「そうは言っても......」と由奈は、昨日弥生が泣き崩れていた姿を思い出しながら、優しく声をかけた。「私たちは姉妹みたいだから、無理に強がらなくてもいいんだよ。泣きたいときは泣いていいの」それを聞いた弥生は、笑顔を少しだけ和らげ、「私はあなたが思うほど弱くはないの。昨日の悲しみはもう過ぎたわ。私たちは前に進まなきゃ。時間は絶え間なく流れているし、これからも生活は続いていくの。ましてや私はこれから赤ちゃんを育てなきゃならないし、泣き続ける時間なんてないわ」由奈はさらに何かを言おうとしたが、ここまで強くなった彼女に、わざわざ心の痛みを掘り返させることもないだろうと考え、沈黙した。たとえそれが強がりだったとしても、時間が経てば、弥生も本当に前を向いて笑えるようになるだろう。「うん、その通りだね。さすが弥生。これからはあなたから色々学ばなきゃ」と由奈は微笑みながら言い、二人は笑いながら抱きしめ合った。部屋に戻ると、弥生は持ってきた品々をバッグに移し、由奈はそれを見ながら話しかけた。「これからは一緒に住むの?」弥生が答える前に、由奈はすかさず続けて言った。「じゃあ、もう少し広い家に引っ越さなきゃね。この辺りは静かでいいけど、古い地域だからインフラが心配でさ。今朝いくつか物件を見てたんだけど、
当初、あの契約には署名しなかった。もし署名していたら後々面倒が生じるかもしれないと考えていたからだ。自分が承諾した条件については、約束した以上、できるだけ果たすつもりだ。だが、由奈はそんなふうには考えていないようだった。「ふん、その話を聞いただけで彼女が無礼だって思うわ。助けたことを利用して、あなたに国内から出て行くよう要求するなんてね。もし人助けを受けたことでこんなふうに無礼な形で恩を返すことを強要されるなら、最初から助けなんか要らなかったんじゃない?」怒りで我を忘れている由奈とは対照的に、弥生は穏やかに微笑んで、「仕方ないよ、私が借りを作ったからね」と言った。由奈はまだ文句を言いたそうだったが、弥生が彼女を制止した。「いいの、気持ちはわかるけど、もうこうなった以上、穏やかに受け入れよう?」「うん......」由奈は不満そうにうなずいたものの、弥生が海外に行くことを考えると、どうしても寂しくなってしまった。「それじゃ、あなたが海外に行ったら、もう会えなくなっちゃうね?」弥生は少し考えて、「今は便利な時代だから、会いたいときにいつでも会えるんじゃない?」と答えた。「確かに。でも......やっぱり会いたくなっちゃうと思う。会えるといっても、国内にいる時ほどじゃないだろうし」弥生が愛おしそうに彼女の頭を撫でようとした瞬間、突然インターホンが鳴った。「こんな時間に誰だろう?普段は誰も来ないんだけど。ちょっと待ってて、見てくるから」由奈が玄関へ向かうと、弥生は手元の荷物を整理し始めた。その中で、離婚届受理証明書が目に入った弥生はしばし沈黙し、証明書を素早くバッグの内ポケットにしまった。その時、外から足音と話し声が聞こえてきた。「そうか、一度来ただけで住所を覚えちゃったのね」その声を聞き、弥生は顔を上げた。由奈が駆け込んできて、「弥生、弘次が来たわよ」と知らせてきた。部屋の入り口まで来た弘次は、紳士的に立っていた。弘次?弥生は手にしていた物を置き、玄関へと歩み寄った。彼女の姿を見た瞬間、弘次は軽く彼女の後頭部を撫でながら、優しく微笑んだ。「泣き虫の女の子がいるかと思ってたけど、すっかり大人になったみたいだね」二人の様子を見ていた由奈は、微かに唇を引き締めてから「ちょっと買い物に行ってくるわ。ゆっくり話してね
「何も分からないのか、それともまだ決めかねているの?」弘次は指先でテーブルを軽く叩きながら、笑みを浮かべた声で問いかけた。「子どもを一人で育てるのだから、ちゃんと考えないといけないだろう?」その言葉に、弥生は顔を上げ、眼鏡越しに彼の温かい眼差しを見つめた。「手伝おうか?」と弘次が提案した。弥生は首を振った。「いいえ、それは大丈夫」「そんなに早く断るなんて、僕の条件が気に入らないのか?」「違うの」弥生は首を横に振った。「あなたは国内で長期的に活動するつもりでしょ?私、たぶんほかのところに行くから」その言葉に、弘次の目が一瞬緊張した。「どこへ?」「海外へ」弥生は淡々と答えた。弘次は指先をわずかに収縮させ、しばらくしてから再び力を抜いた。「やっぱりそうだったか、国内に残ると思っていたのに」「このことを知っていたの?」「君のお父さんは海外にいるんだから、僕が知らないわけがないさ」そう言うと、弘次は微笑を浮かべながら続けた。「ちょうどいいことに、帰国前に伯父様にお会いしたんだ」その言葉は、弥生にとって驚きの知らせだった。「父に会ったの?どうして早く言わなかったの?今、父は元気?」弘次は少し間を置き、それから静かに言った。「伯父様は、君を心配させたくないんだよ」「どういうこと?」弥生の表情は一瞬にして真剣なものに変わった。「父に何かあったの?何かトラブルでもあったの?」「特に問題はないよ」弘次は穏やかに答えた。「仕事で少し大変だったようだけど、伯父様の能力は優れているから、すぐに解決できるさ」「それなら、どうしていつも電話では何も言わないの?うまくいっているって言うばかりで、私には何も教えてくれないなんて。娘なのに、どうしていつも隠そうとするのかしら」「弥生、伯父様は君を愛しているからこそ、あえて隠しているんだよ。もし......どうしても心配なら、僕と一緒に海外に行くかい?」その提案に弥生は驚いた。「でも、あなたは国内での活動を続けるんじゃなかったの?」「そうだ」と弘次は頷き、「本来は国内で活動する予定だったんだけど、最近市場を調査した結果、国内の市場はほぼ飽和状態だと分かったんだ。もし僕が国内に重心を置き続けるなら、会社は赤字になる可能性が高いさ」マーケット調査の必要性は弥生も理解していた。彼女
戻ることが難しい?弥生の顔に浮かぶ笑顔は部屋の薄暗い照明でさらに柔らかく見えた。頬にかかる髪が美しい瞳を覆い、心の中は見えなくなっていた。ただ彼女の静かな声がゆっくりと流れていくだけだった。「私はもう、戻れる道なんてないの。最初から振り返るつもりもなかったわ」室内の雰囲気は、重々しく沈んた。弘次はじっと彼女を見つめていたが、やがてため息をつき、思わず手を伸ばして彼女の頭を優しく撫でた。「もう、悲しいことは考えない方がいい。過去のことなんだから」弥生も同じようにため息をついた。「そうね、過去のことだもの。考えたところで、何も変わらないわ」由奈が帰宅し、弥生が夜には弘次と一緒に出発することを聞いた瞬間、驚きでその場に立ち尽くし、やがて目が赤くなった。涙をこらえ、無理に笑顔を作って言った。「今夜の便なの?そんなに早いなんて。荷物はもう全部そろったの?」「うん、もう大丈夫」「何か忘れ物はない?私が確認しておくから」そう言って由奈はそのまま寝室に向かった。弥生も後についていくと、彼女があれこれと探しているのを見つめながら、「何も忘れてないよ。宮崎家からは小さなバッグひとつしか持ってこなかったし、服も持ってきてないから」と言った。つまり、万が一忘れ物があっても、この家には何もないという意味だった。「ああ、私ったら忘れてたわね。じゃあ、食べ物を用意しようかな。海外まで長旅になるでしょ?妊娠してるんだから、すぐお腹が空くでしょうし、飛行機の中で食べられるようにあなたの好きなものを作っておくわね」弥生は彼女を引き留めて、「いいから、そんなに手をかけなくても。搭乗時間には機内食が出るし、それを食べるから大丈夫」と言った。しかし由奈は、「機内食より私の手作りの方が絶対に美味しいわよ。すぐに食べなくても冷めても美味しいものを作るから。次に作ってあげられるのがいつになるかわからないし」と返した。その言葉に納得した弥生は、「じゃあ、一緒に作るわ」と微笑んだ。それから由奈は弥生のためにいくつかのお菓子を作り始めた。彼女はお菓子作りが得意で、妊娠して甘いものを好むようになった弥生にとって、小さくて精巧なお菓子が箱に詰められていく様子を見るのは、とても嬉しいものだった。「全部私の好きなものだわ、気を利かせてくれてありがとう」
「別に遠慮しているわけじゃないけど」最初、弘次は彼女が遠慮しているだけだと思っていたが、弥生が荷物を出したとき、彼女が本当に遠慮していないことがわかった。彼女の荷物は小さなバッグひとつだけだった。弘次はしばらく彼女を見つめ、最終的に手を差し出して言った。「僕に渡して」弥生は少し驚いた顔をして、「え?」と言ったが。「これだけの荷物だから大丈夫」と言おうとする彼女から、弘次は強引にバッグを受け取った。弥生は一瞬言葉に詰まったが、何も言わずにそのままにした。由奈も一緒に彼らと車に乗り込み、空港へ向かった。空港に着くと、由奈はとうとう感情を抑えきれず、弥生を抱きしめて声をあげて泣き出した。「うわああ、弥生!絶対に私のこと忘れないでよ!もし忘れたら、わざわざ会いに行って、あなたを困らせに行くから!」弥生も彼女につられて目が少し赤くなり、彼女を抱きしめ返した。「何を言ってるのよ。あなたのことは忘れないわ」「約束して、私はあなたの一番の友達だから。海外に行っても、私以上に仲良くする友達は作らないでね」「約束するわ」「それと、イケメンの友達ができても独り占めしないで、ちゃんと私に紹介してよね」「わかったわ、ちゃんと覚えておく」「時間ができたら、絶対に会いに行くからね」「うん、向こうで待ってるわ」二人がこんなふうに話し合っている様子を見ながら、弘次は穏やかな微笑みを浮かべた。しかし彼の隣で待機していた助手は腕時計を確認し、弘次のそばに歩み寄り、小声で「そろそろ出発の時間ですが」とささやいた。その言葉に、弘次の笑顔はわずかに冷え、冷たい視線で助手を睨んだ。助手はその視線に震え、思わず後退して口を閉ざした。この人には誰も逆らえない。弘次は「狂気の男」として有名だったからだ。しかし、彼が弥生に対して向ける穏やかに眼差しに、助手は思わず驚きと興味を抱いていた。誰も想像しなかった。弘次というこの男が、一人の女性のために帰国し、そしてこんなにも優しく接しているとは。弥生と由奈はしばらく抱き合っていたが、やがて由奈は自分から離れ、鼻をすすりながら言った。「もう十分だよ。これ以上抱きしめてたら、飛行機に乗れなくなちゃう。早く行きなさい」そう言いながら、彼女は弥生を軽く押した。突然のことに驚いて後ろに下がると、腰にふと温かい感触が
南市 南市市立病院 「おめでとうございます。あなたは妊娠しています。お子さんはとても元気です」 霧島弥生は手の中の報告書を握りしめて、驚いた顔をした。 妊娠?霧島弥生は喜ばしさと驚きを感じながらも、まだ信じられなかった。 「これからは定期的に再診に来てくださいね。お父さんはいますか?入らせてもらえますか?いくつか注意点を伝えたいのですが」 先生の言葉に霧島弥生は気を取り直して、恥ずかしそうに笑った。「主人は今日来ていません」 「まったく。忙しいからといって、奥さんと赤ちゃんのことを放っておくわけにはいきませんよ」 病院を出て、外はしとしとと雨が降り出した。霧島弥生は自分の小腹を撫でた。 ここには、もう小さな命が宿っている。 宮崎瑛介との子供だ…… スマホが震える気がした。取り出して見たら、宮崎瑛介からのメッセージだった。 「雨が降ってる。この住所に傘を持ってきて」 霧島弥生はそのアドレスを確認した:○○クラブハウス これはどこ?今日は会議があるって言っていたじゃないか? しかし霧島弥生は迷いもせず、宮崎家のドライバーにこの住所まで自分を送らせた。 「もう帰っていいわ」 「奥様、私はここで待ったほうがいいじゃないでしょうか」 霧島弥生はしばらく考え、首を横に振って「結構よ。主人と一緒に帰るから」 宮崎瑛介を探しに来たのだから、彼と一緒に家に帰ろうと思った。 宮崎家のドライバーである田中はすぐに車を動かして去った。 さっきはじめじめと雨が降っていたが、今は激しい雨に変わった。 霧島弥生は傘を差してクラブの入り口へ歩いた。 ここはビリヤードクラブで、内装が高級そうに見えた。霧島弥生は入り口で止められた。 「申し訳ありませんが、会員カードを提示してください」 霧島弥生はしばらく考えて、結局外に出て宮崎瑛介にメッセージを送った。 「着いたよ。まだどのくらいいるの?下で待ってるから」 メッセージを送り、彼女は傘を持って入り口の近くに立って、雨を眺めながら、妊娠の確定診断について考えていた。 彼が出てくる時に直接伝えるか?それとも、彼の誕生日にサプライズプレゼントとして後であげた方がいいのか? 霧島弥生は考え込んでいた。自分が階上にいる人々の笑い者になっているとは思
親友が騒ぐ声の中で、宮崎瑛介は目を伏せて、霧島弥生に素早く返信をした。「傘はいらない。先に帰っていい」このメッセージを受信したとき、霧島弥生は心の中で少し変だと思い、「何か問題があったの?」と返信した。彼女は目を伏せてしばらく待ったが、宮崎瑛介からの返信は来なかった。きっと、本当に忙しいのだろう。霧島弥生は先に帰ると決めた。「ちょっと待って」後ろからかけられた声に彼女は止めた。振り返ると、二人のおしゃれな女性が彼女の前に歩いてきた。その中の背の高いほうが彼女を見下ろして、「霧島弥生なの?」と軽蔑したように尋ねた。相手は明らかに悪意を抱いている。霧島弥生もぶっきらぼうに答えた。「あなたは?」「私が誰かは重要ではないわ。重要なのは、奈々が戻ってきたこと。気が利くなら、宮崎瑛介のそばから離れなさい」霧島弥生は目を見開いた。長い間その名前を聞いてなかったので、その人間がいることすらほとんど忘れてしまっていた。相手は彼女の気分を悟ったようで、また彼女を見下ろして、「なぜそんなに驚いているの?二年間偽の宮崎奥様をしていたから、頭が悪くなったの?本当に自分が宮崎奥様だと思ってるの?」霧島弥生は唇を噛み、顔は青ざめ、傘を持つ指の関節も白くなった。「もしかして、諦めていないの?奈々と争いたいと思っているの?」「こいつが?」霧島弥生はそっぽを向いて、そのまま歩き始めた。二人の女が言うことを聞くのをやめた。二人の叫び声が雨の中に消えていく。霧島弥生が宮崎家に帰ってきた。玄関のドアを開けると、雨に濡れた姿で立っている彼女を見て驚いた執事は「奥様!」と声を上げた。「こんなに濡れて、どうなさいましたか?早くお上がりください」霧島弥生は手足が少し痺れていた。家の中に入るとすぐに、彼女はたくさんの使用人に囲まれ、使用人は大きなタオルで彼女の体を覆い、髪を拭いてあげた。「奥様に熱い湯を入れて!」「生姜スープを作って」霧島弥生が雨に濡れたことで、宮崎家の使用人は混乱していたので、一台の車が宮崎家に入り、長い影が玄関に現れたのに誰も気がつかなかった。冷たい声が聞こえてきた。「どうした?」その声を聞いて、ソファーに座った霧島弥生はまぶたを震わせた。どうして戻って来たのだろう?彼は今、奈々と一緒にいる
宮崎瑛介は彼女を浴室に連れていき、出て行った。霧島弥生はずっと頭を下げていたが、宮崎瑛介が離れると、彼女はゆっくりと頭を上げ、手を伸ばして涙をそっと拭った。しばらくして。彼女は浴室のドアを内側から鍵をかけ、ポケットから妊娠報告を取り出した。報告書は雨に濡れて、字はもうぼやけていた。もともとサプライズとして彼に伝えたいと思っていたが、今は全く必要ない。宮崎瑛介は携帯を手放さない人であることを、2年間彼と一緒に過ごしてきた彼女はよく知っていた。しかし、彼自身がわざわざ彼女にそんなメッセージを送って、笑い者にされるようなつまらないことをするわけがない。きっと誰かが彼の携帯を持ち、そのようなメッセージを送って、笑い者にされたに違いない。たぶん、彼女がバカのように傘を差して下で待っている姿を、上から多くの人が笑っていたのだろう。霧島弥生は長い間その紙を見つめ、皮肉な笑いを浮かべながら、報告書を引き裂いた。30分後。霧島弥生は静かに浴室から出てきた。宮崎瑛介はソファーに座り、長い足を床にのせた。その前にはノートパソコンがあり、まだ仕事に取り組んでいるようだった。彼女が出てきたのを見て、彼は隣の生姜スープを指した。「この生姜スープを飲んで」「うん」霧島弥生は生姜スープを手に取ったが、何かを思い出し、彼の名前を呼んだ。「瑛介」「何?」彼の口調は冷たく、視線はスクリーンから一度も離さなかった。霧島弥生は宮崎瑛介の優れた精緻な横顔とEラインを見つめ、少し青ざめた唇を動かした。宮崎瑛介は待ちきれずに頭を上げて、二人の目が合った。入浴したばかりの霧島弥生は肌がピンク色になり、唇の色も前のように青白ではなく、雨に濡れたせいか、今日の彼女は少し病的に見えて、か弱くて今すぐにでも壊れてしまいそうだった。ただその一瞥で、宮崎瑛介の何らかの欲望が刺激された。霧島弥生は複雑な心持ちで、宮崎瑛介のそのような感情には関心を持たず、自分の言いたいことを考え込んでいた。彼女がようやく言いたいことを言おうと、「あなたは……あっ」ピンク色の唇がちょうど開いたとき、宮崎瑛介は抑えられないように、彼女の顎をつかんで体を傾けながらキスをした。彼の粗い指はすぐ彼女の白い肌を赤らめた。宮崎瑛介の息がとても熱く、燃